空港に到着して 入国審査を終えると

手荷物のない俺は 両替だけして 外に出た。


まだ朝なのに 汗ばむほど 暑くて。

こんな時なのに 俺は 郷愁を覚える。


大学生の時 仲間数人で ここに来た。

特に目的もない 貧乏旅行だったけど。

最後の一晩 贅沢をしようと 

泊まった リッツカールトン。


俺は その高級な 特別感に 引き付けられて。

いつか 絶対に こういうホテルに

出入りできる奴になるって 強く思った。


そんな話しを 俺は 何度も 葉月にしていたから…


きっと 葉月は リッツカールトンに 泊まっている。


俺の 賭けのような 願望。


もし 葉月が リッツカールトンに 泊まっていたら

俺達は もう一度 やり直せる…


俺は タクシーカウンターで チケットを買って。

リッツカールトンに 向かった。


昨日の続きのような 格好で。

何も 持たないまま…