でも──。


「こんな話、聞いてくれてありがとう」


それなのに、水城くんがくれたのはそれとはまったく反対の言葉だった。


どうしてあなたは、そんなに優しいの……?


わたしの問いは水城くんに届くはずもなく、彼は智也くんのお墓を見ながら話した。


「智也のミサンガがここに落ちてるのを見つけてさ。だからここに墓を作ったんだ」


「そうだったんだ……」


そう言われてさっき水城くんが拝んでいた石を見ると、青と白の糸で編まれたミサンガが石にかけてあった。


「大会の日、智也の命日なんだ。そんな日に大会があるなんて何かの縁かもしれないし、きっと近くにいるはずの智也に大会で優勝するところを見せたいんだ」


そう言って笑ってからサーフボードを持って練習に向かう水城くんの背中を見送った後、わたしは1人でここに残って智也くんに手を合わせてから水城くんを追いかけた。


水城くんなら、きっと優勝できるよ。


わたしは心の中で、きっといろんな思いを背負っているであろう彼の背中に声をかけた。