「ふざけんな!! 花凪の気持ち考えろよ。どれだけつらくて、どれだけ泣いてたか、分かんないのかよ!」


手足が震えて、身体中の力が抜けていた。


わたしは尻餅をついたままで2人が怒鳴りあっているところを見ながら、今すぐ浅野さんから逃げたい衝動に駆られていた。


「何なのあんた!」


浅野さんが去って行って水城くんが振り返ってくれても、わたしの震えは治まらなかった。


水城くんが振り返って、わたしの方へ歩いて来ながら手を差し出した。


「花凪、大丈夫?」


その手がわたしに触れようとした瞬間。


──パン!


「花凪……?」


今……、わたし、水城くんの手を振り払ったの?


自分のしたことに衝撃を受けて水城くんを見ると、彼もまた衝撃を受けたような顔をしていた。


何が何だか分からないけど、わたしに触れようとした水城くんの手がものすごく怖かった。