「なんかあった?」


「なっ、何もないよ」


本当は水城くんに全部話してしまいたい。


瑠璃さんのことも、わたしの気持ちも全部全部。


でも、そんなことできない。


「絶対何かあった顔してるよね」


「なんでもないってば!」


気づいたらそう叫んで、わたしは家へと駆け出してしまっていた。


「織原さん!」


背中に水城くんの声を受けながら、私は立ち止まれずに全力で水城くんから逃げることしかできなかった。