『あなたはご自分が思っているよりも、女性として素敵な方ですよ。派手ではないが、家庭的な雰囲気がある。私はあなたのそんなところに惹かれていたのかもしれません。未練たらしいですね。すみません』

「いえ……」

『来週の木曜日、お待ちしています。会社のご友人と是非一緒にご参加下さい。望月と本平さんも喜ぶと思います』

「はい。わざわざご連絡ありがとうございました」

 ホームに電車が入る。
 電話を切り、電車に乗り込む人の後列に並ぶ。

 あの日、恥を掻かせた私に、木崎は憤慨するどころかフォローしてくれた。

 木崎に対する申し訳ない気持ちと、日向に対する靄がかかったような不透明な気持ち……。

 一歩踏み出せないのは、日向が年下だから?

 ◇

 ―花菜菱デパート、女子ロッカールーム―

「雨宮さんおはようございます」

「おはようございます。山川さん、今朝は早いのね。あれ?昨日と同じ洋服」

「雨宮さんわかります?見てないようで、ちゃんとチェックしてるんですね。昨日、虹原さん東京出張だったの。だから朝まで一緒でした」

「そう。順調なんだね。もう正式に決まったの?」

「はい。雨宮さんは私と同じ課の先輩ですし、是非挙式披露宴に参列して欲しいのですが、招待状を発送する前にどうしてもひとつ確かめたくて」

 制服に着替えながら、山川に視線を向ける。

「彼の過去は気にしないつもりだけど、過去に男女関係のあった人は、やはり参列して欲しくないんです」

 山川はそう発言すると、私をじっと見つめた。