「驚かせてしまってすまない。その子は私達黒崎家が引き取って育てるよ」



幼かった私にはあまり状況が理解できていなかった。



一体、何が起きているのか。



「...えっ、でも....」



と、私の手を握っている施設の人が渋った。



「その子は私達が引き取ると言っているんだ。....何か文句あるのかな?」



その時の和臣さんの威圧には誰も勝てないと思う。



幼い私でも少しだけ空気の変化を感じた。



あれは上に立つ者としての和臣さんの威厳。



誰も逆らうことが許されないような空気感。



「.....い、いえ。黒崎さんがそうおっしゃるなら....」



震える声でそう言った施設の人は掴んでいた手を離した。