「いつの時代の君も、辛そうに頑張って居たよ。でも、身体を使い切った君は、いつでも満足そうにしていた。今は毎日、クラスの女子たちに酷いことをされて、辛くて悔しい思いをしているよね」



あまり人から触れられたくない話題に、唇を噛み締める。



「ねぇ、聞いて。ちょっと説教臭くなるかもしれないけど」



私の沈黙を肯定だととった先輩は、再び一人語る。



「仏教には自ら命を絶つと、二度と人間には生まれ変われなくなるっていう教えがある」



だから、何。

愚かな行為だとでも言いたいの?

すると、何を思ったのか、ようやく私を地面に下ろす。

久しぶりの地面の感触に安堵した。

その途端、先輩が私を真っ直ぐ見つめて言った。



「俺は、死ねない」



私は茫然とする。

先輩は苦笑いを浮かべた。



「死ねないと言うと、語弊があるかな。身体を使い切ると、直ぐに違う人間へ入れ替わる。いや? 取り憑くとでも言うのかな。だから、前の時代で生きていたことを、意識的に覚えているんだ」

「……全て?」

「大体のことは」

「……辛いことも?」

「もちろん」



先輩は困ったように、また眉を下げ、笑う。