「……あのね、綾那。
お父さんは東京の大学に行きたいって行った綾那を東京に行かせるために本社への異動を希望したの。
実際、綾那を東京の大学に進学させて1人暮らしさせて毎月仕送りしてって、正直私たちには厳しいの。
でもお父さんは、私たち親の都合で綾那の希望を潰したくなかった。可能性を潰したくなかった。だから異動を希望したの。
綾那が転校して大変ってのは、お父さんにも同じことが言えるでしょう?
それでも、その苦労を買ってでも、綾那のためだからってお父さんは異動を希望したの。
でも綾那の卒業の時期だと、会社にも新入社員が入ってきて、異動とかできるような時期じゃないの。

これは大人の都合なのはわかってる。
でも…お父さんの気持ちもわかってあげて。お願い。
綾那のためにって決めたことなの」


……私のため、か

私が、去年の暮れに志望大学を東京の大学にしたからなのか
将来、就きたい仕事のために取得しなければならない資格はここらへんの大学では取れないから

もう、私が受け入れるしかないじゃん。

私のためだったなら、もうそれ受け入れるしかないじゃん。


「……じゃあ、今年は編入試験と大学受験、両方頑張らなきゃだね。
もし落ちちゃったらごめんね」


私は諦めて、空笑顔でそう伝えた。
まだ、転校するって覚悟とか、実感とかはないんだけど…

でも2人の悲しい顔ばっかり、見たくないもんね。


「ごめんな、勝手にお父さんが決めたことで…」

「ううん。
私が勝手に志望大学決めたからだもん。

むしろ、私のためにありがとう。お父さん」