2人で 食事をしている時 

奏斗の スマホが 微かに鳴って。


「あっ。カンナだ。」

奏斗は そう言って 躊躇うように 私の顔を 見た。

「出ていいよ。」

” カンナ ” が 誰か わからないまま

私は 奏斗に そう言った。


奏斗は 手の平を立てて  ” ゴメン ” という 動作をしながら

『もしもし。』と 通話ボタンを 押した。

『うん。何だよ。今 メシ食ってるから。急ぎじゃないんだろ?後で かけ直すよ。』

『だからさー。俺は 暇じゃないんだって。うん…。うん。もういいだろう。切るよ。』


少し 話した後で 通話を終えた 奏斗。

「高校の 同級生なんだ。時々 電話して来るんだよ。」

と 私が 何も 聞かないうちに 言った。

「へえ…そうなんだ。」

私は 平気そうに 答えたけど。


奏斗の 馴れ馴れしい 話し方が 気になって。


すごく 嫌な予感が したけれど。

私は 何も 言えなかった…


奏斗とカンナさんの 関係を 問い詰めることも。

私といる時に カンナさんの 電話に出ないでとも。


何も 言えないまま…


まだ 付き合ったばかりで。

奏斗の気持ちが よく わからなかったし。


奏斗に 嫌われることが 怖かったから。


私は 何も 言えなかった…


薄笑いを 浮かべて。

黙って 奏斗を 見つめていた。