■■ しょーくんside ■■
差し出した手を、早く握ってくれ。
そう思いながら板張りの上に立つ自分のつま先を見つめる。
返事はYESの一択しかないよ。
それ以外の音を発したならば、雰囲気ぶち壊しのムードブレイカー呼ばわり決定。
というかそもそも、俺は知っている。
きゃーとかひゅーとか期待を込めてはやし立てる観客を、彼女なら絶対裏切らないって。
このやり方が汚いっていうのも承知。
でもさ、こうでもしないと言わせてくれないじゃん、俺の告白《きもち》。
だから、ほら早く、この手を。
ぱしっ。
きた、と思ってバッと顔を上げる。
見ると掴まれたのは手首で、いや手のひらを握るんだよ緊張してんのか可愛いな、と突っ込んだのは瞬く間で。
ぐいっと引力が走ったと思ったら女とは思えないほどの怪力で牽引されて。
「っと……!」
もつれそうになる足をなんとか持ちこたえ、されるがまま舞台をあとにする。