記憶シュレッダー

そして由香里が振られたことをスッカリ忘れてしまったことを思い出し、立ち止まった。


あれは由香里の演技なんかじゃない。


本当にあのシュレッダーは人の記憶を消してしまうのだ。


もう二度と近づいちゃいけない。


絶対に使っちゃいけないものだ。


頭では理解しているのに、ドアの向こうからあたしを引きつける雰囲気が漂ってくる。


その雰囲気に負けて、一歩、また一歩とあたしは歩きだした。


見るだけ。


少し、あのシュレッダーを確認してみるだけだ。


使わなければいいだけ。


自分自身に言い聞かせながらドアを開ける。


電気を付けて、ゆっくりと布をかけてあるシュレッダーに近づいた。