記憶シュレッダー

☆☆☆

もう大丈夫だからというあたしを押し切り、浩太は家に来てくれることになった。


「どうしよう。こんな時間から来るってことはきっと泊まっていくよね」


ふと気がついて焦り始める。


帰ってからずっと浩太と電話をしていたから、着替えだってできていない。


お風呂の準備も、食欲はないけれど晩ご飯だってまだだ。


とにかく、着替えくらいしておかないと。


そう思い、リビングから出る。


「嫌なことはぜ~んぶ消しちゃえばいいんだよ!」


廊下に出た途端に聞こえてきた子供の声に、あたしはハッと息を飲んで立ち止まった。


この声は……。


あたしはカクカクと、壊れたロボットみたいに首を曲げて視線を移動させた。


廊下の奥には祖父の部屋がある。


「シュレッダー……」


あたしは小さな声で呟き、一歩祖父の部屋に近づいた。