記憶シュレッダー

☆☆☆

薄暗い一人ぼっちのリビングに入ると、途端に恐怖心が湧きあがってきた。


刃物を持った男に追いかけられるなんて、人生で初めての経験だった。


思い出すとゾワゾワと体中に鳥肌が立つ。


「やっぱり、伯母さんの家に行こうかな」


そんな弱音を吐いてスマホを取り出した時、浩太からメッセージが届いているのに気がついた。


《浩太:無事に1人で帰れたか? 遅くなってたから、心配だ》


その文面に一気に涙があふれ出した。


浩太はずっとあたしのことを心配してくれていたみたいだ。


あたしは涙をぬぐい、浩太に電話をかけていた。


ちょっとだけでいい。


浩太の声を聞けば安心できると思ったからだ。


『もしもし、敦子? メッセージの返事がないから心配してたんだぞ?』


その声に安堵し、また涙が滲んできた。


「大丈夫だよ。今家に戻ったところ」


『今? もう9時前だぞ?』