記憶シュレッダー

☆☆☆

警察への説明は1時間ほどで終わった。


実害はなかったし、この当たりの警戒を強化することになっただけだった。


だけど犯人は刃物を持っていたのだ。


あたし以外に被害がないとは言い切れなくて、不安はいつまでも消えなかった。


「今日は泊まっていけばいいのに」


車で家まで送ってくれた伯母さんが心配そうに声をかけてくる。


「そこまで甘えられません。今日は本当に助かりました」


そう言って頭を下げると、伯母さんは納得のできない表情を浮かべた。


「敦子ちゃん、お祖父ちゃんが入院中だからってそんなに他人行儀になることはないのよ?」


「そんなつもりは……」


否定しそうになって、その通りだと感じて口を閉じた。


お祖父ちゃんが入院している今、伯母さんとあたしの関係は少し離れているように感じられた。


もちろんそんなことはないのだけれど、どこかで遠慮してしまう心が芽生えたのは確かだった。


「本当に、大丈夫です」


あたしはもう1度伯母さんにお礼を伝えて、家の中へと入ったのだった。