記憶シュレッダー

あたしが道を曲がっても、足音はまだ付いてくる。


キュッキュッと同じ靴音を響かせて。


あたしは呼吸をすることも忘れて伯母さんの家へと向かった。


とりあえずそちらへ帰れば人はいるし、電気もついているからあきらめてくれるかもしれない。


もし、万が一にでも伯母さんたちが出かけていたら……?


その考えは、左右に首をふってかき消した。


同時に、どうして歩きながら伯母さんに連絡を取らなかったのだろうと後悔した。


目の前に見えているあの角を曲がれば、もう伯母さんの家についてしまう。


心臓は早鐘を打ちはじめ、全身に嫌な汗が噴き出している。


と、とたんに後ろから聞こえてくる靴音が早くなった。


キュッキュッキュッキュッ。


明らかにあたしとの距離を縮めているのだ。


その音に思わず足がすくんでしまった。


その場に立ち止まり、動くことができない。