記憶シュレッダー

その様子にさすがにあたしと蒔絵もただ事ではないと感じた。


「どういうこと? 本当に記憶がなくなったの?」


蒔絵の質問に「記憶がなくなる? なんのこと?」と、由香里。


「塾の田丸君のこと、覚えてる?」


あたしは由香里の肩を掴んで聞いた。


「田丸君……? あぁ、そういえばそんな人もいた気がする」


「いた気がするって……由香里が好きだった人だよね?」


「あたしが田丸君を好き!? そんなのありえないよ! ただの友達だって!」


由香里はそう言い、大きな声で笑い始めた。


その声の大きさにギョッとしてしまう。


「ほ、本当にただの友達なの?」


蒔絵が恐る恐る由香里に質問する。


「当たり前じゃん? あたしずっと好きな人いないし」


由香里が嘘をついているようには見えなかった。