記憶シュレッダー

「これで全部忘れてやる!」


由香里はそう言うと紙をシュレッダーにかけた。


シュレッダーは機械音を発しながら紙を切り刻んでいく。


「確かに、これならスッキリできそうだね」


蒔絵がそう言った時だった。


「あれ? どうしてあたし泣いてるの?」


由香里が自分の頬に手を当てて首をかしげた。


「どうしてって、振られたからでしょう?」


「振られた? あたしが、誰に?」


あたしの答えに由香里は瞬きを繰り返す。


「ちょっと冗談ならやめてよ。このシュレッダーのせいで記憶が消えたとか言っちゃう?」


蒔絵が由香里をちゃかすように言う。


しかし、由香里は本当に覚えていないようで首をかしげたままだ。