記憶シュレッダー

確かに、このシュレッダーはここにあるだけで引きつけられるものがある、不思議なものだった。


「嫌なことを忘れるって、どういう意味だろうね?」


蒔絵が首を傾げている。


「嫌なことをシュレッダーにかけるってことかも?」


由香里はそう言い、あたしにペンと用紙を催促した。


あたしはわけがわからないまま、由香里にその2つを渡す。


「こうして嫌な思い出を紙に書いて、全部シュレッダーにかけるってどう!?」


由香里は髪に振られた事実を書き込んでいく。


《あたしは振られてない!》


《あたしは田丸君のことなんて好きじゃなかった!》


書きなぐられたその文字は、涙に滲んだ。