記憶シュレッダー

☆☆☆

「由香里、しばらくは引きずりそうだね」


由香里がリビングから出ていったのを見て、蒔絵は言った。


「そうかもしれないね……」


自分から告白しようと思っていた相手を目の前で取られたのだ。


いくらなんでもショックは大きいと思う。


あたしが同じ目に遭ったら、きっと寝込んでしまう。


「早く忘れられるといいけど」


そう呟いた時だった。


トイレのドアの開閉音が聞こえてきた。


由香里が戻ってくるのだと思ったが、なかなかリビングのドアが開かない。


「由香里?」


心配して廊下へ出てみると、由香里は祖父の部屋の前で立ちつくしていた。


「そんなところでなにしてるの?」


「今、この部屋から何か聞こえた気がして」


由香里はそう言って祖父の部屋のドアを指差した。