記憶シュレッダー

「もし、告白した女がいなければ、付き合ってたかもね」


蒔絵が呟くように言った。


「え……?」


「なんとなくだけどね。少なくても、嫌いな相手に勉強を教えたりはしないでしょ?」


蒔絵の言葉にあたしは頷いた。


確かに、そうかもしれない。


「そっか……」


相手が由香里のことをどう思っていたのか今ではわからない。


ただの友達だったのかもしれないし、少しは好きだったのかもしれないし。


「でも、もういいの! もう、振られたんだから!」


由香里は大きな声でそう言い、勢いよく立ちあがった。


「ちょっとトイレ!」


嫌な記憶を振り払うようにそう言い、由香里はリビングから出たのだった。