記憶シュレッダー

「一緒に勉強しようって誘いたかったけど、怒らせちゃったかもって気にしてたぞ?」


「別に怒ってなんかないよ」


そう答える声がつい冷たくなってしまう。


浩太も、そしておそらく由香里もあたしのことを本当に気にしてくれている。


それは理解しているのに、どうしても突っぱねてしまうのだ。


「帰ってからずっと勉強してたのか?」


あたしの服装を見て気がついたように浩太が言う。


「うん。そのくらいしないと、あたしは合格できないから」


そう言ってから、初めてエンピツの汚れが手についていることに気がついた。


同じ問題を何度も何度も繰り返しやり直しているからだ。


「 根詰めすぎるのはよくないぞ?」


「わかってるってば!」


ここでこんな話をしている間にも、ひとつくらい問題を解けているはずだ。


突然声を荒げたあたしに浩太は驚いたように目を見開く。


「……ごめん。勉強したいから、今日は帰って」


昨日はあれだけいい雰囲気だったのに、あたしは浩太を追い返してしまったのだった。