その夜はあまり眠ることができなかった。


お祖父ちゃんのことは気がかりだったし、静かすぎる夜に少しだけ恐怖心があった。


目を閉じて何度も寝返りを打ち、ようやくうつらうつらしてきたのは夜中の2時だった。


不意に「嫌なことはぜ~んぶ忘れちゃえばいいんだよ!」という声が聞こえてきた気がして、あたしは跳ね起きていた。


心臓がバクバクと早鐘を打っている。


「誰かいるの!?」


部屋の中に聞いてみても、返事はない。


あたしはそっと部屋を出てキシム廊下を進む。


突き当りにあるのは祖父の部屋だ。


あたしはゴクリと唾を飲み込んでドアの前に立った。


大丈夫。


ただの聞き間違いだから。


自分自身にそう言いきかせてドアノブを握る。