記憶シュレッダー

あたしは両親の記憶がほとんどないけれど、祖父が懐かしがって捨てないでいるのだ。


あたしも時々この部屋に入り、両親の思い出の品を眺めたりしていた。


だから知っていたのだ。


ここに、父親が使っていた黒いボストンバッグがあることを。


あたしはクローゼットを開くと下の段に顔を突っ込み、ホコリのかぶったボストンバッグを取り出した。


思っていたよりも一回りくらい大きい。


でも、それでちょうどよかった。


なにが必要なのかよくわからないから、いりそうなものは全部入れていくつもりだった。


あたしはバッグの中にガムテープとロープを入れ、それを持って自室へ戻った。


ジーンズとTシャツに着替え、髪の毛を団子にするとその上からキャップをかぶった。


一見すると男か女か区別もつかないだろう。