「嫌なことはぜ~んぶ消しちゃえばいいんだよ!」


友人との思い出に沈みこんでいるとき、再びシュレッダーが話かけてきた。


ワシは驚いてシュレッダーの前まで移動する。


「消すって、どうやって?」


シュレッダーは答えない。


それでもワシは真剣にシュレッダーと向き合った。


店で見かけたときから妙に惹かれるものがあった、不思議なシュレッダーだ。


話しかけていれば、その内会話ができるんじゃないか?


そんなバカげた考えが頭をよぎった。


「そんなワケないのにな」


息子が家を出て1人になったから、きっと寂しいのだ。


自分にそう言い聞かせ、机の上のいらない書類をシュレッダーにかけた。


古いものに見えるけれど、シュレッダーの刃は書類の束を簡単に切り刻んでいく。