記憶シュレッダー

「嫌だよ。そんな得体のしれないものに頼るなんて」


蒔絵もしかめっ面をしている。


「どうして? 心の傷がなければもっと平穏に過ごすことができるんだよ?」


「そうだけど、でも由香里は人を好きになった気持ちまで忘れたよね?」


蒔絵の言葉に由香里は少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。


振られた記憶が消えるということは、それに絡む記憶や感情も本人からは消えるということだ。


「そうだけど、忘れちゃえば同じだよ?」


どうやら由香里は本当にあのシュレッダーを使えばいいと考えているようだ。


「同じじゃない!」


不意に蒔絵が叫んだ。


怖いくらい真剣な表情を由香里へ向けている。


「嫌なことがあって乗り越えて生きていくのと、得体のしれない力を借りて忘れるのが同じなわけないじゃん!」


蒔絵は自分の力で道を切り開いていきたいのだと、理解できた。


だけど由香里は違う。


それぞれの考え方がるから仕方がないけれど、2人は真向から衝突している。