記憶シュレッダー

☆☆☆

いつもより早い時間にベッドに入ったせいか、夜明け前に目が覚めた。


そのままもう１度寝たかったけれど、目が冴えてしまってなかなか寝付けない。


トイレにも行きたくなってきて仕方なくベッドから出る羽目になった。


このまま朝になったら学校で寝ちゃうかも……。


そう思いながらトイレから出た時だった。


「嫌なことはぜ～んぶ忘れちゃえばいいんだよ！」


そんな子供の声が聞こえてきてあたしは立ち止まった。


ゆっくりと祖父の部屋へと視線を向ける。


そこにはいつもと変わらぬドアがあるだけで、妙なところはなにもなかった。


しかし、あたしの背中には冷汗が流れていった。


「なんで……？」


思わず呟き、一旦玄関へと走った。


ちゃんと鍵はかかっているし、チェーンもかけている。


眠っている間に誰かが出入りした形跡はなかった。


ではなぜ？