内心焦りながら辺りを見渡し、パッと目についたのは、ちゃんと扉が閉まりきっていない掃除用具入れだった。


人間一人なら入れる幅がある。汚そうだし入りたくなんかないけれど、今は一刻を争うから……仕方ないか。


扉が閉まりきっていないおかげで、下手に音を立てずに中に入ることができた。

慎重に扉を閉め、息を潜める。


目の高さにある隙間から廊下を覗くと、　数秒後に生徒会室のドアが開き、「じゃあな、八樹」という声の後、会長──北村 大我くんは帰って行った。




…はぁ、あぶなかった。



爽やか生徒会の裏の顔なんて、きっと誰も知りたくないだろうなあ。
あんなに紳士でモテモテの生徒会メンバーが実は腹黒だったなんて、泣いてしまうファンもいるんじゃないか。しらないけど。


私にとっては別にどうでもいいことだ。
図書室によって用を済ませて早く帰ろう。