ぜんぶ、しらないふり。





───それで、だ。


嫌な予感というものは当たるのがまた嫌な点であって、朝のやり取りを“でかい独り言”で済ませてしまった自分を、私はすぐ後悔することになるのである。





「…どういうつもり?」

「なにが?」

「片岡くんのせいで最悪な1日だったんだけど」

「最高のまちがいじゃなくて?」

「刺すよ」

「こえー」




その日の夜。
自宅──じゃなかった、片岡くんの家にて。


リビングにあるソファに座った私は、半人分の距離を開けて隣に座る片岡くんに向かって我ながら物騒な言葉をかけていた。


鋭い視線を送っているつもりが、当の本人は全く動じてなどいない。
けらけら笑うその綺麗な顔がムカついてしょうがなかった。