ぜんぶ、しらないふり。






私と片岡くんが並んで歩く姿を見た生徒たちの声。


だから嫌だと言ったんだ。
面倒なことにならなければいいなぁ。

聴きたくなくても耳に入ってしまう見当違いな言葉に はあ…と小さくため息をつく。



「笑ってないってよ、涼風さん」

「余計なお世話」

「でも可愛いって、褒められてんじゃん」

「女の子が言う『可愛い』ほど信じられないものはない」

「はっ。言うねー」



けらけら笑う片岡くんを睨むと、「こえー」とこころのこもっていない声が返ってきた。


……ぜったいバカにしてる。

ひっそりこっそり平和に生活したいのに、いったいどこで狂ったんだ。



ああ…今この瞬間にも何人に目をつけられているのだろう。

やだやだ。
ホント、ぜんぶ腹黒毒舌クズ野郎のせいだ。




「次はどうしよっかなぁ」


教室に向かっている途中、片岡くんはそんなことをぼやいていたけれど、聞くのはなんだか嫌な予感がしたので、でかい独り言だな…と思うくらいで流すことにした。