「涼風さんに血と涙があることをこの目で確かめたいだけ。…つか涼風さんだって、同居がバレるのと俺と仲良くなるのだったらどっちがラクか、わかってるだろ?」



わかっている。
わかっているからこそ、嫌なのだ。

厄介な人に興味を持たれてしまった。
変わった癖(くせ)をもつ人と一緒に暮らすことになってしまった。




「お互いにしか知らないひみつがあった方が刺激的で楽しいっしょ」

「私は平和で穏やかな暮らしがしたいよ」

「涼風さんが知らない世界を教えてあげようか」

「必要ない…」

「冷めてんなぁ。マジでその澄ました顔、俺が壊したい」

「きもちわるい」

「で、どうすんの?返事、きかせて」



片岡くんの口角があがる。
答えなんて、もう確信しているかのような笑顔。

…けれどもう、仕方ない。