ぜんぶ、しらないふり。





別にいいっていってるのに。

けれど、わざわざボストンバックをもう一度奪い取ってまで自分で持ちたいわけじゃない。
「頑固」とか言われるのも面倒だし、ここは大人しく預けることにしよう。



「ありがと」

「おー」



適当な返事がかえってきた。
仮面を被ってたら「こんなの普通だよ」とか言ってるんだろうな、とそんなことを思う。



片岡くんの背中を追って階段を上がる。

2階には部屋が3つあり、階段を上ってすぐ右手に見えた部屋の入り口には、《YATSUKI》と書かれた木製のプレートがかけられていた。




「涼風さんの部屋、そこね」



片岡くんの部屋の隣。
どうやらそこが私の部屋らしい。


扉を開けて中に入ると、ベットやテーブルなどの、部屋を構成する最低限の家具は揃えられていた。光が良く差し込む部屋だ。

私が昨日まで使っていた部屋の2倍くらいの広さがある。