玄関を抜け、短い廊下を歩きながらそんな会話をするお母さんと、チカちゃん こと片岡くんのお母さん。

その後ろを、たくさんの荷物を持って歩く私────と、私服姿の片岡くん。



「持ってあげよーか、その荷物」

「いい」

「はっ。ブレないね、ホント」



裏の一面を知っているからこそ、彼の優しさに触れるのはなんだか気が引けるのだ。

別に気使わなくていい。
腹の中、まっくろくろすけのままでいていいから、私のことはほっといて欲しい。



「なぁ、チカちゃん」



前を歩く母親たちがリビングのドアに手をかけた時、片岡くんはそう声を発した。



「荷物あるし、先に部屋案内した方良いと思うんだけど」

「確かにそうね…」

「俺が案内しとくからさ、チカちゃんはマホさんと話してていいよ。しばらく会えなくなっちゃうんだし」