ぜんぶ、しらないふり。





ついさっきまでメイナが座っていた場所に座ったのは、ひとつ隣の席にいたはずの片岡くんだった。

お開きになったら帰るのが普通なのでは。

なんで片岡くんが───しかも爽やかの仮面をとった“裏バージョン”の彼が、そこに座るんだ。




「片岡くん、彼女にまつわる情報色々流れてるよ」

「へえ。どんな?」

「黒髪の清楚系」

「誰だろ。1か月前くらいに遊んだ他校の女かな」

「…遊んでるんだ」

「涼風さんも俺と遊ぶ?」

「絶対無理」



まるでそれが普通かのように言わないでほしい。
片岡くんが誰と何をしてようと良いけれど、私を巻き込むのはやめてくれ。


はあ…とため息をつくと、彼は「冷めてるね」と言って笑った。