ぜんぶ、しらないふり。




「佳都ちゃん」


ソファの上で体育座りをして 膝に顔を埋めるように俯くと、とすん…と隣に座った片岡くんに名前を呼ばれた。


「ほんと、ごめん」

「…べつに大丈夫」

「でも帰って来てからまだ1回も目合ってない。ごめんね佳都ちゃん」

「…、いいって」

「良くなさそうじゃん。俺のこと見て、ちゃんと」



やなの。優しくされたら泣きたくなる。
寂しさと自己嫌悪が爆発しちゃいそう。


「ねえ、だめだって」

「っ、」


だけど、片岡くんが私に拒否権を与えてくれないことも知ってる。



「…泣きそーじゃん。そんなに寂しかった?」


半ば強引に私に顔を上げさせた片岡くんと目が合う。すこしだけ焦点が合わないのは、多分、私の目が潤んでいるせいだと思う。




「……ぜんぜん」

「そ?俺はすげー寂しかった。早めに切り上げたのに電車が止まってこの時間。タイミング悪すぎた」

「、」

「ね。俺、『おかえり』って言って抱きついてくれる佳都ちゃん期待してたんだけど」