ぜんぶ、しらないふり。





「妹の学童の迎え頼まれちゃったんだ。おばあちゃんが転んで、ママが病院に付き添うみたいで。あ、ケガは大したことないらしいんだけど、迎えは間に合わないからって」

「私のこと気にしなくていいから早く帰んな?」

「うん、ごめん。この残りのパンケーキ、食べちゃっていいから」

「食べきれたら食べとくね」

「佳都ならいける!じゃあホントごめん、お先」

「うん。付き合ってくれてありがと」



カフェを出るメイナの背中を見送って、目の前にあるパンケーキのお皿2つに目を向ける。

げえ、これ全部は無理だなぁ…。


とりあえず食べられる分だけ食べて帰ろう。
残したとしても仕方ない。




「────え、もうおわり?」



生クリームをたっぷり乗せたパンケーキを口に含んだ時、隣の席から、そんな声が聞こえた。

口をもぐもぐさせながらつられて目を向けると、声の主は片岡くんの彼女……ではなく逆ナンしていた女の子だった。