付き合い始めてからというもの、2人きりになるのはどうしても緊張してしまうので、変にちょっかいを出されても勉強に集中出来なかったら困るなぁ、と思っていた。
けれど、それをそのまま本人に伝えるのはまるで自惚れているみたいで嫌だったのだ。
「俺が部屋に入っちゃいけない理由があるの?」と聞かれたものの、(2人きりになるのは恥ずかしいです)なんて言えるわけもなく。
私の勝手な自意識以外で断る理由も見当たらなかったので、流れるままに片岡くん部屋に招き入れたわけなんだけど。
「で、ここはこの公式をつかう」
「っ、ちょ、」
「あとこのxがー」
「か、片岡くん」
「ねえ、佳都ちゃんちゃんときいてる?」
「、っ」
この野郎、この男。
片岡くんが勉強中に何もしてこない保証なんかどこにも無かった。私だってそれは分かっていたんだ。
自惚れでもなんでもない。
片岡くんは、私の彼氏は、そういう男だ。