「佳都ちゃん、そこ違うよ」

「ちょ、近い」

「わざと」

「勉強に関係ないことは受け付けてない」

「はっ、ブレないねー」



時刻は21時を回ったところ。


私の部屋で、片岡くんと私は横並びで座り、教科書やノートが広げられている小さなテーブルを囲んでいた。


テストが近くなっていて、今回の範囲は数学が少し不安なんだよね、とそんなことをポロリと洩らしたところ、片岡くんが「俺が教えてあげよっか」と提案してきたのである。


腹黒がベースになりすぎて忘れかけていたけれど、彼は元々は『運動も勉強もできる爽やか王子系イケメン』だったわけで。


いつもヘラヘラ笑っているけれど、学力は私より遥かに上だ。教えて貰えるのなら教えてもらった方が得だと言うこともわかる。