片岡くんがくしゃくしゃと襟足を掻く。
ほんのり赤い耳と、なかなか合わない視線。
はて、これはもしかして。
「……照れてるの?」
「は?ちげーよ」
「え。違うの」
「ちがうね。ぜんぜんちがう」
「…ツンデレなの?」
「佳都ちゃんにいっっちばん言われたくない台詞ね、それ」
照れてる、みたいだ。
少なくとも いつもみたいな余裕は感じられない。
片岡くんもこういう顔するんだ、照れるんだ…って思ったらなんだか嬉しくなる。
「佳都ちゃん、やっぱ呼び捨てしばらくいいや」
「…、うん」
「魔球だった。想像以上に」
「何の話」
「佳都ちゃんが悪い女って話」
ぜんぜん言っている意味は分からないけれど、また照れた片岡くんが見れるなら 時々頑張って呼んでみてもいいかなー…と思ったりもするのである。
「佳都ちゃんホント心臓に悪い」
「…あ、そう(…それは私の台詞なんだけど)」
それは、とある平日の夜のひとコマ。