「ね。佳都」
「ヤダ」
「ヤじゃない」
「っ、」
「佳都」
ヤダって言ってるのに。
その瞳に捕まったら終わり。
私はもう逃げられなくなる。
ていうか、「佳都」ってそんな簡単に呼べちゃうの、悔しい。
私はこんなにドキドキしてるのに。
目が合うだけで、触れられただけで、心臓はバクハツしそうになってるのに。
「……や、」
「ヤダはもう聞かないって」
「……、…き、くん」
「ん?」
「……八樹くん……、」
いつも余裕そうな片岡くんは、 ────八樹くんは、ずるい。
掠れた声。弱々しくて恥ずかしい。
名前呼ぶのってこんなに緊張するもの?
「……や、やっぱ無理」
もう呼ばない。やっぱりもう少し時間が欲しい。
私の気持ちに余裕が出来るまで……って、片岡くんと一緒にいたらそんな時は来ないかもしれないけど。



