ぜんぶ、しらないふり。





そう言ったのが最後。

「おまたせー」という女の子が席に戻ってきてしまったので、それ以上発言することはできなかった。


女の子の背中越しに片岡くんがこちらを見て、彼は小ばかにするようにフッと笑みをこぼしていた。



彼女じゃないって、ただの逆ナンって、

…じゃあ、彼の彼女にまつわる噂は全部ただの“目撃情報”だったってことか。



興味のない情報ばかりが積もっていくけれど、おかげて片岡くんに対する“爽やか王子”のイメージは、私の中ではほとんどゼロに近い。




「ごめん佳都、電話長くなっちゃって」


そんなことを考えていると、ようやく電話を終えたメイナが戻ってきた。


なにやら申し訳なさそうに眉を下げている。

中学からの付き合いだ。
メイナになにか不都合が起きてしまったのだと言うことはわかった。