「…すぐには無理」

「ケチ」



そんなこと言われたって。

名前で呼ぶのって 結構ハードだ。呼んだことがない訳では無いけれど、あの時は勢いだったと言うか、気が確かではなかったというか。


とにかく、すぐには無理。
心の準備が整うまでまってほしい。



───と、その旨を片岡くんに伝えたんだけど。



「ヤダ」



コンマ3秒で断られてしまった。



ヤダって子供か。

片岡くんは距離感バグってるから私のことすぐ名前で呼べたかもしれないけど、私は無理だ。無理無理。




「佳都ちゃん」



その手には乗らない。そうやって甘い声で呼べば私が揺らぐと思ってるんだ。あながち否定出来ないのが悔しい。

けど、でも ────…




「佳都」

「っ」




……まってよ。

それは反則。レッドカードで即退場。


ずっと"ちゃん"付けだった片岡くんにいきなり呼び捨てにされるなんて 想像もしていなかった。
自分の頬が一気に紅潮していくのが分かる。