「佳都ちゃんさ、いつになったら名前で呼んでくれんの」



なんの前触れもなく言われたそれに、思わず「え?」と声を洩らした。



「なに急に」

「片岡くんって よそよそしいじゃん」

「今更じゃん…」



夕飯を食べ終えて、ソファに並んで座り テレビを見ていた私と片岡くん。チカさんはたった今お風呂に入ったばかりだった。

私の方に身体を向けて座り直した片岡くんが、再び口を開く。



「今更じゃねーよ」

「え」

「佳都ちゃんは彼女だから。名前で呼ばれたら嬉しいだろ」



片岡くんは清々しいくらいに素直だ。

名前で呼ばれたら嬉しいんだ。

そっか。じゃあ今日から名前デビューを───…って、そんな簡単に出来るスキルは私には無い。