ぜんぶ、しらないふり。






「彼女とデート、優雅な休日だね」

「はっ、なに?嫉妬?」

「日本語ワカリマスカー?」

「今日も相変わらずうぜーのな、おまえ」



ナルシストな腹黒毒舌野郎はどうやら日本語が苦手みたいだ。

誰が嫉妬するか。
腹黒イケメンには興味ないって言ってるじゃん。



愛想笑いを浮かべていると、視界の隅でミルクティーベージュの髪が揺れた。お手洗いから彼女が戻ってきたのだろう。


「じゃ」と言って、片岡くんの視界から外れようとする────と。



「涼風さん」

「はい?」

「逆ナンされただけ」

「はい?」

「彼女じゃねーよ、安心しな」