ぜんぶ、しらないふり。






「…もー、おわり、」


ようやく唇を離した片岡くんがぽつりとつぶやいた。


「……、」

「そんな物足りなさそうな顔すんな」

「…、してない」

「してるよ。無自覚ならタチ悪いよケートちゃん」



くしゃくしゃと頭を撫でられる。

…私の大好きなやつだ。片岡くんに頭を撫でられると安心する。




スマホを見て時間を確認した片岡くんが、「そろそろ戻んないと」と言った。


そっか、もうそんな時間になっていたのか。



「戻ろっか」

「…、うん」




…やだ、もうちょっとだけこうしていたい。

あと1分…10秒でいいから、もう一回ぎゅってしてほしい。



片岡くんの制服をクイッと引っ張ると、片岡くんは「もー…」と困ったように眉を下げた。