ぜんぶ、しらないふり。






そんなことを思いながらトイレを出ようとしたとき。




「…っ、やだよぉ…っ」

「はい大人しくしよーね」



聴こえてきたその声に、俺の頭の中は一瞬で支配されてしまった。



トイレの外がなんだか騒がしいなと思ってはいた。


佳都ちゃんがやばい。

ふざけんな。どこのだれか知らないけど、もし彼女に何かあったら再起不能にしないと気が済まない。



けど、そんなことしたら佳都ちゃんは俺のことを怖がってしまうかもしれない。


嫌われたくねーなぁ…。

響みたいな落ち着いた男が助けに来たら、佳都ちゃんのこときっと心から安心できるだろうな。



周りの女の子は俺のことを“王子”って呼ぶけれど、俺は全然そんなんじゃないんだ。

王子って、多分、響のほうが絶対似合う。