ぜんぶ、しらないふり。






「は、はじめまして。ゆりです」

「…あ、涼風佳都です」

「メイナでーす」




初めまして。

───…だけど、私は彼女を知っている。




1週間前、駅前のパン屋さんから遠目で見かけた彼女。片岡くんの隣にいたあの子。



あの時、顔は見えなかったはずなのに、直感が“あれはこの子だよ”だって言っている。




「涼風さん。ごめん、俺も昨日聞いたばっかなんだけど」

「…、日野くん、」

「あの日、八樹が一緒に居たのはゆりちゃんらしい」




――大我とゆりちゃん、もうすぐ半年記念日で

――何かプレゼントしたいから選ぶの付き合ってほしいって

――俺と八樹だったら八樹のほうが相談しやすかったんだって





ああ、私、どうしようか。