ぜんぶ、しらないふり。






「涼風さん。おつかれ」

「日野くん」



視界に映ったのは、燕尾服を身にまとった日野くんだった。執事のコスプレだと思われる。


日野くんたちのクラスはコスプレ喫茶って言ってたっけ、そういえば。


いつもさらさらの髪の毛は珍しくワックスでセットされていて、前髪が上にあげられている。

…すごく様になっている。さすがイケメンだ。




「すごい、その恰好。似合うね」

「幼稚園児もいい感じじゃん」

「そうかな。この格好、けっこう落ち着かない」

「落ち着かないのは俺もだよ。動きずらいし」




すこしだけ他愛もない会話をしたあと、「涼風さん」と名前を呼ばれた。




「…ちゃんと、八樹と話せてる?」