「……わかった」



それだけ言って部屋を出ていく片岡くんから目をそらす。パタン…と響いたドアの音が、余計に私を苦しくさせる。



「……っ、」




頬を伝ったのは ぬるい私の涙だった。

拭っても拭っても止まらない大粒のそれは、ポロポロとこぼれ落ちて私の服を濡らす。



​──きみのために泣いたりしない、



そんな私の意思は、'嫌いな奴をうっかり好きになっちゃったバカな女を捨てる'のが趣味' な片岡くんに崩されてしまった。



血も涙もある。

私は今、きみを想って 苦しくて泣いている。


こんな風に苦しいのが恋なら。
自分で選択したことで泣くくらいなら。






​────きみを好きになんて、なりたくなかった。