もっとこうしてたい。
このまま ずっと時が止まっちゃえばいいのに。
そんなバカげたことを思ってしまう私がいるなんて、片岡くんと出会う前じゃ考えられなかった。
「……、や、八樹くん」
「…………、え」
良くも悪くも、私の世界は片岡くんに侵されている。
ーーこいつにもまだ呼ばれたことねーの、下の名前
別にサプライズとかじゃないし、喜ばせるつもりで言った訳でもない。
なんとなく今、きみの名前を呼んでみたくなった。……それだけだ、本当に。
見上げるように片岡くんの顔を覗き込めば、「…上目遣いヤメロ」と目を覆われてしまった。
上目遣いって…したつもりは無いんだけどな。



