ぜんぶ、しらないふり。






先輩たちの顔色が変わる。怒りが頂点に達してしまったのか、私の胸ぐらを掴む手が震えていた。

もう1人の先輩も 凄い形相で私を見ている。
せっかく可愛い顔なのに台無しだ。




「調子乗んな……!」




手をふりかぶる彼女。
避けることもできなそうだ。

ああ、その振り被った手は今から私の頬に当たるんだろうなー…。



​──と、そんなことを思った時。






「なーにしてんのかなー」






ガラリと開いた扉。弾んでいるように聞こえるのに いつもより低いトーンで言われたそれ。




「っ、え、なんで…っ」

「は?なんでもクソもねーだろ。いいから離せよその手」

「ち、違うの、違うのあのね」

「耳障りだから喋んな」






声の主は​───…ブラックモードの片岡くんだった。